夏。我が家の田んぼには、たくさんの蛍が飛んでいる。電気がなくても周囲がはっきり見えるほど明るい。ところが何年か前の我が家の田んぼには、蛍は一匹もいなかった。だが、さらにその数年前には今よりもはるかに多い蛍が住んでいたのだそうだ。

 何故、我が家の蛍は減少し、またもどってきたのだろう。我が家では、何年か前から強い農薬や殺虫剤を大量に使っていた。蛍が減ってきたのはそのころだった。減少しているといっても、徐々に徐々に減っていくので、私たち家族は蛍の減少に気がつかなかった。そして、何年かたったある日、蛍がまったくいなくなってしまったことに気づいた。

 私たち家族は後悔した。何故蛍がいなくなってしまうまで気づかなかったのだろう。そして、私たち家族は考えたすえに、農薬のせいだという結論にたどりつき、(1)農薬や殺虫剤の量を減らす(2)使う回数を減らす(3)弱いものへと切りかえる。という対策を考え、実践した。

 始めたころは量や農薬の強さのかげんがわからなくて苦労をしたが、私たち家族は「蛍を守りたい。昔の美しい自然にもどしたい。そして、未来に残したい」という思いがあり、農薬を取り扱っているお店の方に聞いたり、インターネットを利用したりして、農薬の量や強さを工夫した。量や強さを変えるという工夫を始めて数年たったころ、何年か前に田んぼからいなくなってしまった蛍が、また、我が家の田んぼにもどってきた。いなくなる前よりも蛍の数は少なくなってしまったが、それでも、我が家の蛍はもどってきた。

 蛍がもどり始めてきたころ、田んぼの周りの川にも変化が起きた。蛍と同じころにいなくなってしまった沢ガニやドジョウがもどってきたのだ。強い農薬をつかっていたころは濁っていた水も、すっかり澄んでいて、川の底が見えるほどになっていた。

 私がこの体験を通して気づいたことは、私たちがいままで使っていた農薬は蛍やドジョウの住む水を汚し、結果、生きものの住めない環境をつくってしまうということ。我が家では蛍の減少によって気づき、農薬は殺虫剤を弱いものにしたり、量を減らしたりする、という我が家なりの工夫で蛍やドジョウの住める川に回復させることができた。他にも、ポイ捨てをしない、花を植えるなどの工夫で水はまた生きものの住める美しい姿を取りもどすことができる。

 私は蛍やドジョウの住むことのできる川を残したい。川を、水を守るためにも、生きものの命を守るためにも小さな工夫をしていくことが大事なのではないだろうか。

命の住む川
中之条町立中之条中学校1年 山田 礼子さんの作品
私たち農業をする者にとって、自然に感謝し、いたわりながら、この豊かな恵を受けるためにも、このような気持ちを大事に持ち続けなければいけないでしょう。
第14回全国中学生・高校生作文コンクール「かけがえのない地球を大切に」 最優秀賞作品
WWF(世界自然保護基金)は世界最大の自然保護NGO(非政府組織)。絶滅の危機にある野生生物の保護を目的として1961年に設立された。生態系の保全から、地球温暖化や化学物質汚染への取り組みまで、現在の活動は多岐にわたる。WWFジャパンの設立は71年。国内では、石垣島のサンゴ礁を始めとする南西諸島の保全、各地の干潟の保全、FSC(森林管理協議会)による森林認証制度の推進、環境教育の支援などに力を入れている。
写真提供:
デジタルカメラマガジン フォトコンテスト 一般部門 優秀賞作品
「ともしびの舞」   作者:カプチさん(香川県)
WWF ジャパン
よしだ農園は産地直送専門のあきひめイチゴの農園です